東京パートスリー

三日目の東京。
息子Bは、(以前、五月祭に来たときもそうでしたが・・・・)どうやら東京の水が合わない人らしく、すでに三日目にしてホームシックに。
「やっぱり名古屋に戻る」
と言い出して、二時の新幹線のチケットをとっておきながら、八時半には息子Aの下宿を出て、一人で名古屋に戻っていきました。
一人で無事に東京駅にたどり着いて、みどりの窓口でチケットを交換してもらえるだろうかと心配でしたが、高校一年生ともなれば、なんとか自力で出来るものですね。


息子Aは、生まれて初めてのアルバイト(個人塾で高校生・中学生相手に英語・数学を教える)に、嬉々として出かけていきました。
一人下宿に残った私は、部屋の掃除と、洗濯を簡単に済ませて、下宿を後にしました。
目指すは、国立西洋美術館で開催中の「ゴヤ展」です。


ゴヤ展」では、あの有名な着衣のマハのほかに、初期の油彩画とたくさんの素描画が展示されていました。
すでに見学した息子Aに言わせると、
「あんな落書きみたいなもの」
ばかりで、ゴヤの醍醐味ともいえる『黒の作品』が一つもなくて、けっこう期待はずれだったとのことでしたが、私は素描画も面白かった。
作品になる前のスケッチのほうが、ゴヤが身近に感じられた気がしました。
とはいえ、偉大な芸術家ともなると、本当にいたずら書きみたいなもの(手紙の中の挿絵とか・・・)でも価値があるのですねぇ。
美術館はすいていて、見やすかったです。


その後、上野から東京駅に出て、『相田みつを』美術館にも行ってきました。
私はついこの間まで、相田さんの職業は詩人だとばかり思っておりましたが、書家・相田みつをというのが正式だったんですね。
『人間だもの』は、確かに凹んだ気持ちの時には、勇気付けられる詩です。
癒されるのは確かなんだけど・・・・・


最近、日本人ってちょっと「癒される」方面ばかりがクローズアップされすぎてないか?という素朴な疑問が、美術館で作品を見ながらふと感じました。
暖かい詩の内容と、ほのぼのとした書体と、意図的に落とした照明が穴倉のように安心する展示会場でした。
「そうだよね〜、もっと優しい気持ちでお互いに助け合わないといけないよね〜」
「がんばりすぎだよね」
「もっと力を抜いていきればいいんだ」
とか思いつつ、現実には、
「私って、そんなに、言うほど、本当に頑張ってるか?」
と思わず自問してしまいました。
相田さんの作品を見て、心底「ああ、癒された〜」と感じる人は、日常を本当に精一杯生きている人なんだろうなあ。
私はまだまだっす。