人事異動

四月一日の新聞紙上には、県内小中高の教員の人事異動一覧が掲載されます。
定年退職される先生、中途退職される先生、昇進される先生、移動される先生、新任の先生。人事異動は、先生本人もドキドキしていますが、新聞を広げる父兄のほうも、興味津々で眺めているものです。自分の中学時代に新卒で入ってきた、あの先生が、教頭先生に昇格とかいう記事を見つけると、初々しかった当時の姿を思い出して、しみじみしたりするのです。余計なお世話かもしれませんが。



同じ勤務地に六年以上在職している先生は、「そろそろ新しい勤務地に変わるかもしれない」という期待と覚悟と不安を抱いて、三月半ばの内示を待ちます。四十五歳以上の中間管理職とでもいうべき年齢の先生は、異動のドキドキよりも、昇進の期待感の強いドキドキが強いようです。これは直接インタヴューしたわけじゃないので、あくまでも私の推測です。念のため。



ところで、意外に知られていないのが、教員の編成です。私のように非常勤講師という立場と、正規採用の教員と、常勤講師という立場の先生がおられます。非常勤の先生は、受け持ちの授業だけの担当ですから、その授業が終わったら、家に帰りますし、もしも午前中に授業がなければ、午後からの出勤になります。常勤講師は、勤務体制は正規の先生と全く同様ですから、外から見ただけでは区別がつきません。
自分が教員稼業についてみて初めて知りましたが、常勤・非常勤講師の多さに驚いています。一学年五クラスの場合、正規の先生が五人で、常勤・非常勤が四人という構成比率です。早い話が、担任の先生以外は講師の先生だったりします。
講師の先生は、私の様に主婦と講師の二足の草鞋を履く人種と、採用試験合格を目指す二十歳代のフレッシュな人材の二つの流れがあります。
そこで今日のトピックの人事異動ですが、講師の場合は、正規の教員よりも、事はもう少し複雑かつ切羽つまっています。なぜなら講師の身分というものは、雇用に関しては全く保障というものがないからです。早い話が、来年度は失業かもしれない。



二足の草鞋組は、心に余裕があるのでのんびり構えていますが、そうでない非常勤講師は、二月ごろから、さまざまな噂に心を乱されることになります。



常勤講師は、正規の教員と全く同じ働きをするのに、給与面ではあくまでも講師としての給与ですから、教員採用試験浪人をしている人しか、まず成り手はありません。市の教育委員会では、常勤講師をしてくれる人材を確保するのにやっきになっています。正規採用を増やさずに、保障をつけなくてもいい講師で乗り切るという手段は、小さな政府を目指す小泉政権の影響がでているのか、それとも昔からの慣習なのかは知りません。が、とにかく、そういう現実があるのです。



例えば一学年で一人の生徒が転出すると、現在の六クラスが五クラスになったりします。一クラスの生徒数は四十人を超えてはいけないということですから、この時期の転入・転出は皆が固唾を飲んで見守っています。そんなわけで、クラスが一つ増えたり減ったりするその調整として、講師の立場の人間が必要になるのでしょう。



これらの事情をすべてひっくるめて、内示があり、ドキドキがあり、悲喜交々があるわけです。