眉毛

いつの時代も、眉毛って、ある種の内面を測るバロメーターになっていませんか?



私が教えているクラスの中に、丸刈りあたまの男の子がいます。
夏休明けの二学期初めての授業で顔をあわせた時、思わず
「○○君、その眉毛、どうしちゃったの?」と聞いてしまったほど、すごい眉毛になっていました。薄くて、短くて、細い。大抵の子は前髪がついているので、眉毛の存在って、それほど大きくないんだけど、彼の場合、五分刈のヘアスタイルに、極道眉で、インパクト強すぎ。



女の子の場合は、もうちょっとデリケートなので、さすがに
「○○さん、その眉毛、ちょっと・・・」とは言えません。



実は、今日も来年度のクラス編成や担当学年の情報を得ようと、春休みに入って初めて、勤め先の中学を訪れてきました。
と、その時、職員室に入ってきた女子生徒をみて、息を呑んでしまいました。
眉の上半分を剃って細―――く整えているではありませんか。
細眉といえば、マリーネ・デートリッヒという女優さんの眉を思い浮かべると思いますが、あれとはちょっと別な細眉です。
マリーネの眉は、どちらかというと、眉の下の毛を極限まで抜いて、一本の毛が連なって細―――い眉を形作っていますね。



ところが、女子生徒の細眉は、単純に剃刀で眉の上部分をジョリジョリやってしまったのです。剃ったのは昨日の晩かもしれませんが、半日も経過すると剃り跡が青々としていて、どうしても目が引き付けられちゃうんです。
彼女とは春休みはどうだった?みたいな近況を尋ねて少しお話しましたが、その間、不覚にも私の目は一度も彼女と視線を合わすことなく、二センチ上の眉の剃り跡ばかりに焦点が合ってしまいました。



彼女の気持ちは、すごくよくわかります。ティーンエイジの女の子で、鏡を見てため息をつかない子は、まずいないでしょう。自分の顔については、知り尽くしていますよね。春休みに入って、暇も出来て、ますます鏡に向かう時間が増えるのは当然でしょう。それで、ティーン向けの雑誌かなんかで得た知識・・・・眉を変えると、顔の印象も一変します・・・みたいな記事を思い出して、昨日の晩に実践してみたんでしょう。
しかし、私にも経験がありますが、中学生くらいの女の子は、15cm四方の手鏡の中で総ての施術をしてしまうのです。15cm四方の鏡に映るのは、目と眉毛と鼻の一部位じゃないですか。
彼女は顔と髪型のバランスを考えずに、ジョリジョリ眉の上半分を剃り落としてしまったせいで、やけに広くなってしまった額に、青々とした剃り跡をくっきり残しても気が付いていないのです。



「あ゛〜、こんな時に眉毛に関する校則でも明記してあれば、生徒手帳に細眉禁止としてあるよ」といってあげられたのに・・・・