漫画

先生によっては、ノートや教科書に落書きするのを禁じているようですが、私は別に奨励はしませんが禁止もしていません。
実は、ファイルのチェックをする時に、ファイルの表紙に描かれている落書きや、プリントの裏に書いてある漫画のキャラクターを見るのを見るのが密かな楽しみになっていたりします。



四月に、真新しい国語のファイルを配ったとき、
「このファイルはあなたの物です。教科名と組、名簿番号、名前が表紙と背表紙に書いてあれば、あとは模様を入れようがミッキーがいようがシールが貼ってあろうが、それで学習意欲が湧くのなら何でもオッケーです」といってあります。
そこまで言っても、大々的に色を塗ってきたり、アイドルのブロマイドが貼ってあったり、プリクラが貼ってあるという人は、今のところいません。せいぜい10cm四方くらいの大きさの漫画が控えめに描いてあるくらいです。



すごく面白いのは、男の子の漫画です。たいていは少年ジャンプにでているような漫画のキャラの真似ですが、けっこう上手に描かれていて、うまくすると将来、高名な漫画家のアシスタントとして雇ってもらえるかもしれない、
ぐらいの腕前です。アシスタント止まりなのは、彼の国語能力の低さでは、漫画のストーリーが構築されるとはとても思えないからです。いずれにしても、男の子の描く漫画は少女マンガとは違って、絵に動きがあって新鮮です。



二年生の国語の教材に、漢詩があります。絶句だと4コマになるので、教科書に載っている「春暁」「絶句」「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」から一つ選んで漫画を描いてもらったことがあります。
いやいや、これは、面白かった!

「春暁」だと、いきなり布団を下に敷いて寝ているシーン。おまけにクレセント錠の付いたアルミサッシの窓から朝日が燦燦と差し込んでいたり。

「絶句」だと、杜甫がやたらとイケメン風に描かれていたりとか。

「黄鶴楼〜」だと、揚子江豪華客船が浮かんでいたりして。

質問すればすべて模範解答をしてくれるような子が、「春暁」で散っている花がチューリップだと思っていたりするのですから!

彼らが、どんなイメージを持っているか、なかなか言葉では伝わってきませんが、漫画や絵にしてもらうと、「へぇ、この子は、こんな風に理解してたんだ〜」と思考のすべてが透けて見えて面白いです。
もちろん、授業の中で、中国人はベッドで寝ていることや、いくらなんでも唐の時代にアルミサッシの窓ガラスは無いことや、杜甫五十歳ということや、帆掛け舟は豪華客製のことではないことなど、逐一訂正しております。