お出迎え

以前、このブログでも紹介しましたが、○○中学では、遅刻した生徒を、まるでオーナー社長が出社してきたときのように賑々しくお出迎えするという慣習があります。



私が初めてこの風景を見たときには
「世も末ぢやて。嘆かわしいことよ。」、隔世の感がありました。社長が平社員をお出迎えする時代になったんだから。



改めて説明しますと、「遅刻生徒出校」の一報が入ると、校長先生から率先して職員室前に姿を見せ、お出迎え体制を整えます。そして登校してきた生徒に爽やかに、にこやかに挨拶をして、そのまま昇降口までご案内。



先日、校長先生から非常勤講師を集めてお話がありました。
「昨日、とても残念なことがありました。遅刻してきた生徒が、誰にも気づかれずに職員室前を通って、登校したのです。○○中学の生徒に一番必要なのは、先生が自分を見ていてくれるという安心感なのです。皆さん方の力を貸してください」という内容でした。




今年初めて○○中学へ勤務した先生は、きっと
「遅刻の悪癖を助長するようなシステムなんじゃないか」と思ったことでしょう。
私も、心の片隅ではそう思っています。恐らく、一般の生徒の親が、もし学校がこういうことをしていると知ったら、のけ反るほど驚かれると思います。


しかし、一年経って、少しずつ校長先生のおっしゃっているとことの意味が分かってきました。


一時間も二時間も遅刻してくる生徒は、一般的にいうところの遅刻とは訳が違います。
親から飛び蹴りされるくらいにして追い出されて学校へくるのです。生徒は親や学校に対して恨みや不満をいっぱいに漲らせて登校してきます。彼らの顔つきを見れば、気持ちよく家から送り出してもらったわけじゃないことは一目瞭然です。
そんな気持ちのまま教室へ入ったら、授業妨害をするか寝るか弱いものいじめするか、そのいずれかだよね。



今、曲がりなりにも授業が穏やかに行われているのは、問題児が教室に入ってきた時の気持ちが落ちついているからだと思うのです。
職員室前のあのお出迎え儀式は、彼らの気持ちを落ち着かせるトランキライザー的役割を果たしているのではないかと思い始めています。



遅刻や不登校は、どこの中学校でも増えているはず。無表情でうつろな目をした生徒の姿をした中学生、昔から存在していたのでしょうか。
「きっと今まで優しくしてもらったことって、あまり無かったんだろうな」
せっせと声を掛けてあげようっと。