読書感想文その④ 誘導尋問

感想文を書く前に、親子で感想を話し合うのは、とっても有効な方法です。
別に親は、子供が読んだ本を読む必要はありません。
子供にまずは、あらすじを話させます。
あらすじがスラスラお話できる子供ばかりじゃないと思いますが、とりあえず辛抱強く聞いてやってください。そのときに、子供がクドクドと主人公の台詞までしゃべっちゃうところがあると思いますが、そこが感想文の肝だったりするので、腰を折らずに聞いてください。あらすじが分かったら、本の中で、一番良かったのはどんなところか探ってください。
親から見たら、すっごくつまんないところが良かったという子供もいるかもしれませんが、一番感動のメーターの針が振れたところこそが、感想文の核ですから、否定しないで。



「感想文の核」が、感想文の一番最後に来るように構成するのをお手伝いするのが親の役目です。そうなるためには、なんでそう思ったのかを、ひとつひとつ丁寧に質問して答えさせていきます。



「ネロとパトラッシュはかわいそうだった」というのが子供の一般的な答えだとします。
「なんでかわいそうだったの?」
「死んじゃったから」
「他には、かわいそうだったところはなかった?」
「おじいさんが死んじゃったところ。貧乏だったから子供なのに朝から働かなければならなかったところ。本当は絵がみたかったけれどお金がないから見られなかったところ・・・・」など、誘導尋問でもなんでもいいので、とにかくたくさん思い出させます。
その中で、特に自分だったらどれが一番怖いと感じるか、想像させます。貧乏が怖い? 身寄りがなくなることが怖い? 自分の将来か開けていないことが怖い?
周りに自分のことを心配してくれる人がいないことが怖い?・・・など、自分にとっての一番怖い状況を想像させます。



本当は、子ども自身にも似たような経験があれば、一番書きやすいんだけど、近頃の子供って、極端な貧乏とか極端な不幸なんて自分自身はもちろんのこと、周りにもいないから、あまり想像できないんだよね。だから、もしも○○ちゃんが、ネロのようにおとうさんもおかあさんもいなかったら、誰と暮らすことになるかな?とか、ちょっと具体的に想像できるようなキューを出してみてください。わが身と置き換えてみて、初めて真剣に考えます。他人ことならただ単に「かわいそうだねえ」で済んでしまいます。でも、それがわが身におきたら?と考えるだけで、一気に真剣みが加わります。「かわいそう」と思うことはだれでもできますが、自分がかわいそうと思われる立場になったら・・・・そこまで想像できる子供ってなかなかいないものです。



子供が真剣に悩み始めたら、次の一手を繰り出します。
「もし、○○ちゃんがネロと同じような立場になったら、どうやって生きていくつもり?」
「もし、ネロみたいな立場の子供がいたら、どうする? その子はきっと汚いような破れたような服を着ているかもしれないよ」
「かわいそうな犬や猫なら拾ってこれるけれど、かわいそうな子供は拾ってこられないよね」
など、もうちょっと具体的に悩むようなキューを出します。



「風が吹くと桶屋が儲かる」が、感想文の核だとすると、なんで風が吹くと桶屋が儲かったのかを書くのが感想文なのです。
つまり、風が吹く→砂が舞う→目に砂が入る→目が悪くなる→三味線弾きが増える→三味線の皮に猫が使われる→猫が減るとねずみが増える→ねずみが桶をかじる→桶屋が儲かる・・・をいちいち文章にしていくのです。

たとえば「かわいそう」が文章の核なら、貧乏→おじいさんの手伝いをする→おじいさんが死ぬ→一人ぼっち→周りの大人の反応→弱い立場の人を見捨てる大人たち→自分ひとりで生きていく→限界→死→かわいそう・・・を一つ一つ文章にして組み立てていけば感想文に仕上がるのです。
「かわいそう」と思うのは簡単だよね。ネロの周りの大人たちだって、ネロのことをかわいそうだと思っていた人がいたかもしれない。だけどお話の中では、ネロは誰にも手を差し伸べられることなく死んでしまった。実はそこが一番怖かった、ということに自分が気がついた、という感想文なら間違いなくA判定がつきます。