反省会

二学期末に近いある平日の夜、反省会という名の忘年会がありました。普段はなかなかお話できない人たちと話ができる機会なので、私はまめに参加しています。おばさん講師の方は、子供がいたり家事で夜は家を空けにくいという理由で欠席される方が多いですが。



校長先生は、着任二年目ですが、近所の住民の方は、まだ用務員さんだと思っている人もいるかもしれません。スーツ姿で校長室に収まっているというよりは、用務員さん姿で校内を巡っている姿のほうがよく見受けられるからです。それくらいゴム長と首に手ぬぐいを巻いている姿がよく見られます。




そういう校長先生のおっしゃる言葉には説得力がありますよね。
「鏡は先に笑わない」というのが先生の持論で、生徒の笑顔が見たければ、先に教師が笑いかけなければだめだよ、ということです。
職員室前には、構ってほしい生徒がいつのまにかたむろしています。どちらかといえばクラスの中では目立たない地味な存在で笑顔なんか見たことのないような生徒も、最近は笑顔を見せるようになってきました。



去年受け持ったクラスにいた男の子で、あまりにも無表情で動かないので、本当に息をしているのか心配になってしまうような生徒S君がいました。現在三年生ですが、S君のことが、この間も職員室で大きな話題になりました。何と、S君が教室で笑ったというのです。
なんだかグリム童話の金のガチョウのような話ですが、S君の話は本当の話です。

*参照 親切なハンスが小人を助けて金のガチョウをお礼に貰います。
そのガチョウに触ったものは離れることができなくなって、
ハンスとガチョウを先頭に長い行列となり王宮の前を通りかかります。
  それを見た笑ったことのない姫が大笑いをしてハンスは王様から褒美を授けられ  るという話

S君がどんな風に、何について笑ったのか、想像もできませんが、ようやく心が打ち解けた証拠でしょう。校長先生をはじめ、彼に関係している先生方がすごく喜んでいたのが印象に残っています。
15年間、家の中で「馬鹿・・・どうせお前なんか・・・死ね・・・・」の言葉と拳骨のシャワーを浴び続けてきた中学生が現実の世の中にはいるのです。厳しすぎる現実ですが、少なくとも、○○中学にいる三年間は、暖かい目で見守ってくれる人がいて、ささやかながらも心が癒されるんだろうなあ。



こういう先生たちを見ていると、時々新聞沙汰になる問題教師に対して怒りを覚えます。