鉛筆

大学生の時に、オーケストラ部に所属しておりました。
その時、初めて芯の丸まった鉛筆の威力を知ったのでした。



楽譜を見ながら楽器を弾くわけですが、譜面の通りに弾けばいいというものではなく、指揮者が、ここはもう少しゆっくりとか、ここはスタカートを効かせてとか、ここは優しい音色でとか、いろいろ注文をつけてきます。指揮者の注文ばかりでなく、例えば、同じ旋律をバイオリンとビオラがユニゾンで弾いているのに、弓使いがバラバラではおかしいから、バイオリンの弓に合わせるとか、そういう取り決めをして、それをその都度、楽譜に書き足していく作業があります。



一度決めたのが絶対、というわけではなく、時には指揮者が「やっぱり、元に戻そう」ということもあるし、弓使いを変えたら不自然になったので再び変えるとか、しょっちゅう変更があります。
だから、楽譜に記入するのは鉛筆で記入して、変更するたびに消しゴムで消しては書き改めるということになります。



不安定な譜面台の上で、楽器を持ちながら筆記するのはけっこう大変で、譜面台の上からポロリと鉛筆が落っこちることもしばしばです。
そんな時、鉛筆の先端がとがっていたりすると、床に落ちた鉛筆の先はすぐにポキリと折れて、使用不能状態に。



実は、私は、鉛筆は常にトキトキに尖らせておくもので、先の丸まった鉛筆なんて鉛筆の風上にも置けないようなものだと信じていました。
明日に続く