ランチ

息子Aは、昔からその傾向はありましたが、中学になって、いよいよ学校からのお知らせというものを親に見せない性癖が強くなってきました。わざとなのか、物忘れからなのか、そこらへんは分かりませんが、少なくともプリントがまともな状態で、配られたその日に母親の目に触れるということは、まずありません。


これは、我が家の息子だけが特別なんだと思っておりました。
幼いころの育て方が間違っていたんだろうか。
そういえば我が家の夫も、しょっちゅう探し物をしているから、ひょっとしたら、そういう血統なのかもしれない。
いや、消しゴムと鋏がどんどん家の中から姿を消す、我が家のポルターガイスト現象の一端かも・・・



この現象が我が家の息子だけではないという新事実を突き止め、ちょっと胸をなでおろしました。



平均すると、一ヶ月に一回くらいの割合で、息子Aの同級生のお母さん方と食事を機会があります。
例えば、息子の修学旅行の前あたりにランチをしたとします。
一人のお母さんは、持ち物に関する注意事項を聞いたといいます。
一人のお母さんは、部屋割りに関する話を聞いたといいます。
一人のお母さんは、自由時間の過ごし方の話を聞いたといいます。
一人のお母さんは、集合時間と解散時間の注意事項のプリントを見たといいます。
誰一人として、全ての正確な情報やプリントを持っている人はいません。七人の目の見えないひとが、象を触ってやっと一匹の姿を類推するような感じ。
他のお母さん方も、わが息子Aと同じよう息子をお持ちで、
「えー、そんなプリント、いつ貰ってきましたか?」
という声があちらからもこちからかも聞かれます。



世の中の中学生をお持ちのお母さん方。
あなたの息子だけが特別馬鹿ってわけじゃありません。
みんな同じくらい馬鹿で抜けているのです。
プリントが三ヵ月後にミイラ状になって、ベッドと壁の隙間から出てきたとしても、特別なことじゃないと分かっていたら、少しは怒りがわくでしょうが、血管が切れるほどの怒りは湧いてこないでしょう。