ワンセグ携帯

息子Aは小学校五年生の時から携帯電話を持たせておりました。
塾通いで、帰りが遅くなるため、親が心配して持たせたものです。
その当時は、まだ小学生で携帯電話を持つ子どもはそれほど多くありませんでした。
息子Aの携帯電話には、夫の考えでメール機能をつけておりませんでした。
あくまでも、この携帯電話は連絡用だという認識だったからです。



中学へ進学すると、学校の規則で、子どもが学校へ携帯電話を持ってくることを禁止されていました。よその家庭のことは知りませんが、我が家はそのルールに則って、携帯電話を持たせませんでした。
息子Aのクラスや部活動の仲間の中には、こっそり持ち込む生徒も多くいて、そのたびに
「なんでうちは携帯をもっていっちゃあいけないのか」
と、毎日のようにブーたれていた時期もありました。
学校の方針で、高校生は携帯電話許可ということでしたから、息子Aには、高校生になったら、最新式の携帯でもちろんメールも使えるようにしてあげるから、それまでは二度と携帯電話の話をするな、と固く約束したのでした。


それでもしばらくは、事あるごとにメールが打てないから友達とのやりとりが出来ないとか、文句を言っておりましたが、そのうちに携帯を持っていきたいということをピタリと言わなくなったのです。
携帯の進化は日進月歩。
三年前のゼロ円携帯なんて、今では携帯界のシーラカンスそんな化石みたいな携帯なら、持って行かないほうがマシ、とのことらしいのです。


そして晴れて高校に進学した息子Aには、約束どおり携帯ショップで最新式の携帯を買うことになったのです。
たった今、テレビでコマーシャルしているものを選んで窓口のオネエサンに出すと
「これは、うちのショップで一番よく故障して修理に出される機種なんではよ」
と一言。
それで、本人の第一希望ではありませんでしたが、故障の少ないといわれる、それでも使いこなせないようなさまざまな機能つきの、もちろんワンセグつきの、デジカメ並みに美しい写真も取れる携帯電話を三年越しで手に入れたのでした。めでたし、めでたしの顛末です。