停電の夜に

昨夜、突然の停電に、家中をキャンドルだらけにしたと書きました。


実は、そのとき、身の毛もよだつ一瞬の経験をしました。


トイレ・洗面所・玄関先・台所・ダイニングテーブルの上・居間の飾り棚の上・居間のコーヒーテーブルの上にそれぞれ2〜3個のティーキャンドルを置きました。
キャンドルでも、20個近く明かりが集まれば、そこそこ明るいものです。
突然の停電に、ちょっとへこんだ気持ちだったのですが、キャンドルの穏やかな火を見ているうちに、だんだん元気になってきました。


魔が差すとはこのことでしょう。
そのとき、何気なく洗面台の鏡をのぞいてしまったです。
ホラー映画の一幕に使っても全然遜色のない絵が、そこにはありました。


真っ暗な個室の中で、オレンジ色の明かりがチロチロ揺れていました。周りの壁に影が映り、キャンドルの炎のゆれにあわせてそれがユラユラゆれています。まるで水底にいるかのような感覚に襲われました。
明かりが鏡の中に怪しく反射して、初めはよく分かりませんでしたが、鏡に写りこんでいたのは、ザンバラ髪に度の強い眼鏡をかけた知らないオバサンだったのです。
「ぎょっ」
と、思わず腰を引きました。


私の心臓がもう少し弱っていたら、発作を起こしていたかもしれない、というレベルの怖さでした。
・・・・鏡の中のあの知らない人は、一体誰だったの?・・・・・
私はあの時、見てはいけない世界を覗いてしまったのでしょう。