お捨ての話

いつの間にか、準家族のよう地位を確保してきた「お捨て」の猫。
最初は小汚いチビ猫でしたが、毎日餌をもらって栄養状態がよくなってくると、まあまあかわいい猫になってきたではありませんか。



餌鉢に入れてやった餌をひっそりこっそり食べていたのが、そのうちに私たちの傍でも安心して食べるようになり、あらあら、私の父に抱かれてブラッシングまでそれているではありませんか!



そうこうしているうちに、
「一体何歳まで生きるんだろう?」
ギネスに申請したほうがいいのではないかと、家族会議が持ち上がるほど長生きした嫡猫が老衰で死ぬと、言葉は悪いですが、まるでそれを待っていたかのように、「お捨て」がしっかりと我が家の猫として家の中に入り込んできたのです。
私の母は、前のチャトラの猫をものすごく清潔にして飼っていたので、さすがに自由に外を歩き回っているような「お捨て」を部屋の中にいれることはしませんが、寝床はガレージにしっかりと確保されました。




朝晩の餌と暖かいカイロ入りの寝床と自由な散歩。
おまけに、道路に面した一番日当たりの良い南面に置かれたラックの上で丸くなって寝ていると、通りすがりの小学生や近所の住民に頭を撫でられ、今ではすっかり「○○さんちの猫」として認知されています。



日陰の身分だったころは、「ニャ」とも鳴かなかった「お捨て」でしたが、今では名前を呼ぶと
「にゃ〜〜」
返事をするようになったのです。
ブラッシングされれば気持ち良さそうに体を伸ばすし、首をかいてやればゴロゴロと気持ちよさげだし、おなかが空けばスリスリ足元に擦り寄ってきます。
もう「お捨て」ではありません。



もしも我が家のチャトラの猫が「お捨て」のことを気に入らなかったら、母のことですが棒を振り回して追い払ったでしょうが、そんなそぶりを見せなかったおかげで、餌を施され、店子になり、居候になり、準家族になり、今では家族に一員にまでに昇格。
これって猫版のシンデレラストーリーってやつかい?