内申ドロボー

三年生の成績処理が全ておわり、肩の荷を降ろしています。


こればっかりは、経験したことがない人には分からないと思います。
学校の評定が人生を左右するかもしれないのは、多分中学生のときだけですよね・・・・
中学入試には、小学校の成績は関係ないですし、大学受験のときは、推薦を狙っている少数の成績優秀者以外は、基本的には内申点は関係ないですよね。
高校入試は、他県のことはわかりませんが、少なくとも愛知県の高校入試では内申点が半分くらいは考慮されるようですから。
就職試験のとき大学の成績がどれほど影響するのか未知です。



そんなわけで、彼らの人生にいくばくかの影響を与えるかもしれないと思うと、本当に悩みます。



そんな時、とある先生から「内申ドロボー」の生徒、という面白い表現をききました。
ドロボーとは表現が穏やかではありませんが、さげすんだり軽蔑したりといった否定的な意味ではありません。
こういうことです。

その生徒は、ものすごく真剣に課題に取り組んでいる人です。
宿題やノートや作品の提出は必ず忘れずに提出してくれます。
授業態度はケチの付け所がないほど積極的で、自主的に発言もしてくれます。
単元ごとや、漢字の小テストなどは、たいてい9割くらいはとってきます。
ただし、定期テストや実力テストになると、なぜか成績が振るわない。
当然先生は、評定を出すときに悩みます。
「テストの成績だけでいったら、内申点は3が妥当。しかし意欲点や発言点などの授業態度は文句なしにAになる。国語の場合は、テストの点も意欲態度の点も同じ比率で評価しているので、項目ごとの点を足すと評定は4がつく。しかし、4の実力があるとは思えないんだが・・・」



私は、さんざん悩んで、結局は4をつけました。
というか、今の成績のつけ方だと、3よりもむしろ4の方が妥当になるからです。
五つの観点別の得点の合計だと4がつくからです。


そういう生徒は、他の教科でも真剣に真面目に取り組んでいるので、どの教科担任も迷いながらも4をつけることになります。
すると、国語のみならず残りの8教科で同様に実力以上に高い評定点をもらい、結果として、実力よりもうんと良い評定がついてしまうという結果になるのです。


とある生徒の評定を先生が見て、
「ああ、この生徒は内申ドロボーなんだよね」
といったのでした。
この先生は、去年この生徒を担当した人なのですが、やはり、その生徒の実力と評定のギャップには悩まされたといっていました。


う〜ん、難しい。難しい。難しい。
本当にこの生徒のためになっているのかなあ。
実力以上の評定を貰って実力以上の学校を受験して、万が一にも落ちたりしないだろうか?
この子が無事志望校に合格したという結果を見るまでは、いつも喉の奥に刺さった魚の小骨のように、心の片隅に引っかかっています。