車中化粧の少女たち

車中化粧族の女の子が力を入れるのは、下地じゃなくて目と眉毛です。
これも比較的高い割合で、彼女たちには眉毛というものが無いか、とてつもなく薄いという特徴があります。
人間の顔の印象を一番変えるのは眉毛かもしれません。
青白くて眉毛の無い顔って、ちょっと怖いかも。
そこに、眉を描いていくと次第にイマドキの若い子になってくるのです。
(今、泉鏡花の「眉隠しの霊」を思い出してしまいました・・・・・)



私が見ていて一番感激したのは、必殺ツケまつげテクを見たときです。
ツケまつげケースからまつ毛を取り出すと、はさみで小さくカットするではありませんか。
私は、自分でツケまつ毛をしたことがないので見ていてとても参考になりました。
小さなチューブからボンドか糊を搾り出して、つけまつ毛の付け根に塗りしばらく放置しておきます。
その間に、お粉をはたいたり、ハイライトを入れたりチークをさしたりします。
糊が程よく乾くと、今までのお気軽な雰囲気が一変します。鏡を手に持って10?くらいまで近づけ、目じりから一つずつ先ほどのカットしたまつ毛をはめ込んでいきます。
そうか〜、それぞれ人によって目の大きさが違っても、こうやってカットすればどんな目のサイズにも合うんですね。
まつ毛が伸びると、どんな人でも、ほぼ三割がた美人度が増します。まつ毛ってすごい威力があるんです。
眉毛が無くてしょぼいまつげだった頃のあの子は一体どこへ行ったの?
ここまで出来上がる頃には、もう到着地が近いのか、しばしば時計を気にしています。
最後に、リキッドタイプの口紅を塗り、ネットリしたヌーディーな質感の唇が出来上がります。


出来上がると、手際よく化粧道具を片付け、あっという間に淑女に成りすまします。
電車を降りる姿は、堂々と背筋も伸びていて、とても電車の中で衆人の注目を浴びながらまったくのスッピンからつけまつげまでのフルコース化粧してきた子とは思えません。

ある意味、ここまで人の目を気にしないで生きていけるのは、特殊能力かもしれないなあ。