芸子さん

人生初の授賞式の後は、人生初のレセプションが続きます。
授賞式で日本舞踊を披露して式に花を添えてくれた芸子さんと舞妓さんたちも、会場に現れました。


立食パーティーの形式で、幾つかのテーブルが用意されています。
きれいどころのオネエサン方もそれぞれのテーブルで会席者をもてなしてくれます。
私、ナンチャッテは、こんなに間近でホンモノの芸子さんを見るのは初めてでしたから
「いややわぁ、そんなに見つめられては、顔に穴があきますさかいに・・・」
といわれるほど、思わず見つめてしまいました。
顔が小さいこと!
白く塗られた肌は、陶器か何かのようにツルンとしていました。
肌が滑らかで思わず触れてみたくなります。
ふっくらとした唇には小さめの紅がのっています。
肌が白い分、余計に黒目が黒々としてみえます。


仕草がすごい。
彼女たちを見ていて、私は恥じ入りました。
私って、女のオジサンだったんだ・・・・と。
彼女たちは一つ一つの仕草が優雅で色っぽいんですよ。
一人の芸子さんが胸元から名刺入れを取り出して
「マメスズです。よろしお頼み申します」
といって手渡してくれました。一つ一つの動作が丁寧で、スローな動きなのに、滞るということがありません。ゆったりと大きな川に水が流れるような
滑らかな動き。
翻って、自分の所作を水の流れにたとえるならば、急勾配を流れる激流が、数々の岩にぶつかって水しぶきがが当たり一面に砕け散っているような、そんな動きとでも言いましょうか・・・・



「くるくるとコマネズミのように働く」という言葉は、私の中ではシンデレラを連想させて、悪いイメージではありませんでした。
記憶違いかもしれませんが、幼いころに聞かせてもらったシンデレラの物語の中に、意地悪な義理の母や異母姉妹にこき使われて、一日中お屋敷の中をコマネズミのように働いていました、というようなくだりがあった気がします。
それ以来、「コマネズミのように働く」というのは、不遇時代のシンデレラと重なり、やがては王子様のお眼鏡にかなう素敵な女性へと変貌を遂げる展開へと続くわけですから、働き者には薔薇色のロマンスが待っていると思い込んでいました。


でも、やっぱりクルクルとコマネズミのように働く女性には、男の心をつかめない。
男性の心を掴むのなら、ゆったり優雅に優しくゆっくり、ですよ、絶対に。
すっかり女のオジサンになってしまった私は、同性でもこんなにドキドキしてしまうのに、ホンモノの男のオジサンだったら、こんな女性に恋するに違いないと思ったのでした。