バイオニック・ジェミー

昔、アメリカ発のテレビドラマ「バイオニック・ジェミー」というのを見たことありませんか?リンジィー・ワグナーという女優さんが主演していました。チャーリーズ・エンジェルの一世代前のドラマです。

ジェミーは生身の人間(推定30歳くらいの美人で、表の顔は小学校の先生。裏の顔はFBIだかCIAの秘密諜報員兼工作員)なんだけど、部分的に体の一部がサイボーグになっていて、聴力とか視力とかが人並外れて鋭かったり、めちゃくちゃ早く走れたり、高くジャンプできたりするのです。
テレビでは、ものすごく早く走っているシーンを敢えてスローにして、目にも留まらぬ速さで動いているところを演出していました。
けっこう面白い設定で、私は大好きでした。


ジェミーがどうしたのかというと、今回の韓国旅行で、私は見てしまったのです、日本版ジェミーを。


行きも帰りも飛行機の座席は、最前列の左側(出入り口のドア側)でした。透明なアクリル板の衝立一枚隔ててフライトアテンダントのオネエサマと向き合う場所です。ちにみに、ANAとアシアナ航空の合同運行便です。
飛行機が離陸して安定飛行にはいると、直ちに飲み物のサービスがあります。韓国は、二時間弱のフライトです。その間にフライトの案内(日本語と英語)・ライフジャケットと酸素マスクの説明、飲み物サービス・軽食・機内販売・食事の後片付けというイベントがあるので、フライトアテンダントは大忙しです。
今回、生まれて初めて間近でオネエサマ方の働きぶりを観察することができました。
第一印象が、
「まるで昔見たテレビドラマのバイオニック・ジェミーのようだわ」
です。


ひとたび、客席との仕切りであるカーテンを閉めて、小さなキッチン(正式な名前がいるのでしょうけど知らないのでとりあえずキッチンとしておきます)に入ると、生身の女性から、ジェミーに変身します。
両手が違うことをして、しかも的確にすばやく仕事をこなしていました。
例えば、右手で頭上のキャビネットのドアを開け、左手でピッチャーに水を汲む。
例えば、下のキャビネットからコップを出しつつ、後ろのキャビネットからワゴンを引き出す。
うごきに全く無駄ってもんがないのです。
前にテレビで、トヨタ生産方式カイゼンの様子をみました。担当者がストップウォッチで一つ一つの動作に掛かる時間を計って、コンマ何秒かの無駄をそぎ落としてゆくというのをみて感嘆したことがあります。
オネエサマがたの動きは、これ以上の無駄は無いよね、というくらいにきれいに無駄がそぎ落とされているのです。
一つ一つの動作に指差し呼称のチェックも欠かしません。

しかも、常に動作が美しい。
しゃがむ時だって、両膝はピッタリと美しく揃えられ、背筋はピンっと伸ばされています。
更に更に、常に笑顔!間違っても眉間に皺なんか寄ってませんから。


二時間のフライトの間、彼女たちの眉間に皺が寄ったのを見ていません。
やっぱり、プロでした。
こんなに飽きないフライトは初めてでした。