ネコとトコ

イマドキの飽食ネコはいざ知らず、昔から、ネズミを捕まえるものだと思っていませんか?


私の実家で飼われているネコは、もともとはノラネコでした。軒下で雨露をしのいでいたものが、いつの間にか朝晩の餌を貰うようになり、避妊手術も受けさせられて、ついに飼い猫に昇格したというシンデレラです。


このこは、ネコではなくてトコらしい。
ネズミを捕るのが得意なこはネコ。
魚を取るのが得意なこはサコ。
ヘビならヘコ。
鳥ならトコ。
と言うのだそうです。


先日、実家のネコ(トコ)が、常に無く戦闘的オーラを出しているのを目撃しました。
「フーーーっ。ウウウウルルル・・・」
瞳孔が大きく開いてアドレナリン全開。
私が名前を呼んでもまったく微動だにせずにある一点を見つめています。
その視線の先には、地面に落ちている餌を一心不乱についばむ雀の一群がおりました。


ネコはじりっ、じりっ・・・と匍匐前進で雀との距離を確実に縮めています。
雀たちはそれに気付いてるのかいないのか、食事に集中していているようすです。
雀に対する敵意なのか、狩猟本能なのか知りませんが、3メートル先で雀と対峙しているのは確かに一匹のハンターでした。
一日に二度十分な食事を与えられて丸々と肥えた飼い猫に、野生の雀なんか絶対に捕まえられるハズないじゃないですか。
本人にもわかっていると思います。
それを知りつつ、湧き上がる戦いの血を押さえられない姿が、ちょっとカッコいい。
そしてちょっと物悲しく、しかも滑稽でした。


ハンターの邪魔をしてはいけないと思い、そっとその場を離れました。