下流の宴、終わってしまいました

火曜の午後10時が待ち遠しかったこの数週間。
最終回は、ドラマの波乱の幕切れにあわせたかのごとくに、大型の台風が日本列島を直撃しておりました。
そういえば、ニュース番組で台風情報の時間が多く割かれて、開始時間が30分繰り下げられました。


あれだけ頑張っていた沖縄離島出身のフリーター玉緒ちゃんが、合格するところまでは、まあどなたも想像したストーリーだったんじゃないかな。
問題は、翔ちゃんと黒木瞳演ずるところの母親・由美子の関係がどうなるのかに、視聴者の関心は集中していたのではないでしょうか?
こじれ続けて終わるのか、何かしら歩み寄りがあるのか。
結果を書くのはやめときます。


ドラマの中で、文字通り髪振り乱して寝食を忘れて人生をかけて勉強し、やっと勝利を勝ち取った玉緒に対して、翔が
「一生懸命、がつがつと上を目指すタイプの人間は苦手だ」
というような台詞を言います。
本当に林真理子さんは人間描写がうまいなあ、と思いました。

あのドラマを見たほとんどの人は、
「あんたみたいに何の努力もせず、ただぷうらぷうらと目的もなく生きて、テレビゲームに明け暮れるようなタイプの人間は苦手だ」
と思っていたんじゃないの?
それを逆に、プーしている翔から、「がつがつしたタイプ」と一刀両断されちゃうとは思いもよらなかったでしょ?

私は、林真理子さんのファンなんだけど、彼女の(失礼ながら)ガツガツした上昇志向の生き方が大好きです。
ガツガツしたところを隠さずに正面から自らを「上を目指す女」としている点が、好感度高いところです。
露骨なまでに素直に、かつて自分のもっていなかったもの(モノ・お金・栄誉・美貌・スタイルなど)をもつ人に対して
「いいなあ、うらやましいなあ」
という人ってあまり日本にはいないタイプだと思うのですが。
ほら、日本人ってどちらかというと、
「あの葡萄は酸っぱいから」タイプの人が多いと思いませんか。
もちろん実際に林さんがそれらを勝ち取っていったというところが大好きなところ。

ドラマに戻ります。
それで、いってみれば翔君は、林さんが(恐らく)蛇蝎のごとく憎むべき存在だったと想像してます。
お気の毒なことに、翔君は日本全国の茶の間で、
「あんな屑みたいな」、「箸にも棒にもかからない」、「ただ息をしているだけのような」、みたいな悪口をさんざん言われていたことでしょう。
私も、ああいう若者が、日本の将来を暗くするんだよね、とドラマの中の彼とはいえ、マジ切れしそうなくらいに腹立たしく思ってみてきました。


それなのに最後の最後で、玉緒に対して、自分に出来る精一杯の贈り物をしてあげたというあの演出!
翔君が、ただのダメダメヘナチョコマザコン男として終わらせなかったところに、作者の愛があったよね。


偏狭で嫌味で見栄っ張りで息子を溺愛した美人の母親・福原由美子黒木瞳以上のイメージが浮かばないほど、ぴったりの役でした。
さすがプロだねえ。