バッグつながりでもう一つ

去年十一月に、息子Aの下宿の件で東京に出向きました。
たまたま不動産屋さんが上野にあって、新しい下宿に案内してもらうために足を運びました。無事、契約を済ませて、一段落して、息子Aとランチをとり、あたりを散策することに。目と鼻の先が「アメ横」でしたので、それらを冷やかしながら腹ごなしの散歩をしていたときのことです。


ある一軒の店の前で40歳前後のお兄さんが、ビール瓶のカートンの上に乗って、拡声器で客の呼び込みをしていました。
「わけあって、今日の3時でこの店を畳むことになりました。そこで、在庫一層のため店内の全てのバッグは4000円均一で処分させていただいております。この商品は、正真正銘の本皮で、銀座の有名百貨店のバッグ売り場のものとまったく同じ品質ですっ。絶対にお客様にソンはさせませんので、一度店内に入って商品をご覧下さい」


店自体は6坪あるかないかの広さで、壁一面に三段くらいの棚がしつらえてあり、そこに色とりどりのハンドバッグが並んでいました。
中でも、オーストリッチの皮のバッグが10数点、目を引きました。
私は思わず興奮して手にとってしまいました。その小さな店の中にはお客さんが随分いて、皆、手に手にバッグをとっては吟味しています。
が、どの顔も実は半信半疑なんだよね。
もちろん私も・・・。そりゃそうでしょ。だって、もし本物のオーストリッチだったら、いくらなんでも4000円ってことはないでしょうよ。もしも、これが10000円だったら、また違うリアクションだったかもしれません。


ためつすがめつ検分した結果、フェイクユーザーのナンチャッテが出した結論は、ずばり「フェイクだ!」でした。
じゃあ、さっきのお兄さんが拡声器で客に向って心の底から声を絞り出すようにして訴えてきたあの売り文句は一体何だったのか。そんなことを思いながらまたブラブラして、1本違う筋にはいると、なんと、先ほど聞いたばかりの台詞で客引きをしている別のおじさんに出あいました。
「ここは、よんどころない理由で今日の三時に店じまいすることになりました。店内の商品は全て本物で4000円均一・・・・・」
内容は全く同じ、店の構えもほぼ同じで、4000円均一も同じって、おかしいでしょ。
しかも、さっきの店から距離にして100メートル離れているかどうかよ。


露天商だったらみんな身構えちゃうよね。でも、曲がりなりにも店を構えているところで「店じまい」とかなんとか言われちゃうと、つい気を許してしまいませんか?
東京の人は、こんなには引っかからないのかもしれませんが、私のような田舎モンには、引っかかりやすそうなシチュエーションですよね。


フェイクレザーヘビーユーザーのナンチャッテが見切ったのです。
あれは間違いなくフェイクでした。
気をつけましょう!