陶器屋

前回、約一ヶ月ものあいだ、店の掃除とちょっとした配置換えに時間を費やしたという話を書きました。
陶器は重くて動かすのが大変というデメリットはありますが、反面、埃を払うと20年前の商品でも30年前の商品でもピッカピカになるというメリットもあります。いきおい、はたきで埃を払う手にも力が入るというものです。


とはいえ、陶器でも流行りの柄とか形とかがあるのです。
流行は洋服の場合、特に顕著ですが、流行れば流行っただけ、流行が廃れた後の陳腐化は著しくて、もう二度と着ることはないですよね。
私がファッションの師と仰ぐ押田比呂美さん曰く、「たとえ今80年代風が再び流行したとしても、あくまでも80年代風であって、80年代のものは、やはり古臭くて着られない。」と。
どうです?納得ですよね。


例えば、コーヒーカップを例にあげましょうか。40年ほど前に、厚手でぽってりした形と奇抜な柄ゆきのものが流行ったらしいのです。
洋服の流行と根本的に違うのは、40年前に流行った時代遅れのコーヒーカップの形と色とぽってり感は、現代の若者には、とっても斬新なカップに映るらしいのです。
なんと、うちの息子Bは、店を片付けていたときにひょっこり出てきた売れ残りの現品限りのコーヒーカップを一目見て、
「こっ、これはぁっ・・・・」
と絶句してしまったほどの一目惚れで、母から譲られて、今、そのコーヒーカップを毎日使っています。


うちの息子に限らず、十代の若いお客さんが、30年、40年前のデザインのカップを珍しがって買っていってくれます。


絶対にお蔵入りだといっていた商品が売れたことに、ある種の衝撃を受けております。
「ねえねえ、こ〜んな古くっさいコーヒーカップ、私だったら、只で呉れてもいらんわぁ」
と言っていた、あのコーヒーカップを、毎日の食卓で見ているわけですから。


そんな意味でも、古い陶器屋は、タイムスリップ気分が味わえる「宝の山」。
自画自賛でなく、マジで面白いです。