ファッションの師匠

朝日新聞の土曜版に、私がファッションの師と仰ぐ、押田比呂美さんの「装うことは人生よ」の連載が載っています。
師匠の連載が始まって三年以上は経つと思うんだけど、毎回、何か新しい視点で、ファッションについて語っています。

師匠の教えに従って、ナンチャッテの箪笥の中身を徹底的に改造したのは、もうかれこれ10年近くになります。
その時に、思い切って処分した洋服たちには、思い返してみても悪いことしたな〜と、心がチクチク痛みます。が、師匠が力説しているとおり、それらは確かに賞味期限切れだった。
捨てたものに対して罪悪心で心は痛みますが、それらが無くて困ったことは、一度もありませんもん。
流行って、怖いです・・・


それと、確かに時間の経過とともに、似合わなくなるものも多いです。
たとえば、以前は、ぶかぶかのセーターを着ていても、まさかこのセーターの中身が全部贅肉だとは思われなかったはず。
今は、ぶかぶかのセーターとか着ちゃったら、
「うわっ、あのセーターの下には、どんだけ肉が隠れているのだろう?」
と思われそう。
で、仕方なく多少窮屈でも体に沿うラインの洋服を選んでています。
こうしてナンチャッテの箪笥からは、ぶかぶかのセーターは一掃されたのでした。


高校時代の家庭科の授業で、I先生から聞いたお話が忘れられずにいます。
あるお金持ちの奥さまがいました。その人は、小太りだったので、着るものは市販されているものではなくて、すべて採寸から作ったものを着ていました。ところが、何を着ても垢抜けないなあと感じていました。
あるとき、思い立って、世界でも有数のトップメゾンで洋服を作ってもらいました。もちろん採寸から。
やっと出来上がって、ドキドキしながら試着してみると・・・・なんと上着はパッツンパッツン。ボトムに至っては、はくことすらできなかったのです。
奥様は怒ってデザイナーに文句を言うと、デザイナーは、
「あなた、そのパンツをどうやって穿いたのですか?」
ときいたそうです。
「あなたの体型で、そのパンツを美しく穿くには、まず床に寝転んで、その体位で足を突っ込み、そのままお尻まで入れたら立ち上がっておなかを引っ込めてファスナーを上げてみてください。」
言われたとおりに穿いてみたところ、鏡の前には未だかつてその奥様が見たこともないほどほっそりした自分が立っていた・・・という話でした。


美しく装うことと、リラックスした装いをすることは、同時に満たすことはできないという例だったと思います。
なぜこの話がそんなに記憶に残っているかというと、先生がしみじみと、
「教科書には、適度なゆとりのある衣服がいいと書いてあるけど、実際は違うのよね」
と言っていた様子が、いかにも真実を語っていると感じたからです。


とはいえ、これからは若いころとは違って、そう体に無理のある服は着たくない世代に突入するわけで、リラックスしたいが、太って見えるのも嫌、という大変難しい局面に差し掛かってきました。
1/25の記事には、解決法の一つとして、スウェット素材についての提案が載っていました。さすが師匠。50代女性が今知りたいことを、実にタイムリーに教えてくれます。