自閉症の君が教えてくれたこと

今日は、NHKで、とっても素晴らしい番組を見ることができました。
題名は『自閉症の君が教えてくれたこと』というもので、副題に「家族を救った一冊の本」とついています。
重度の自閉症の少年が14歳の時に、自閉症の人がどのように感じて何を考えていたのかを書きつづったエッセーにそってつくられたドキュメント番組でした。


ナンチャッテは、この本の存在は女性雑誌の中の「お勧めの一冊」として、数年前に見たことはありましたが、ほとんど気にせずにしておりました。今から8年も前に書かれていたのに・・・と、読まなかったことを悔やんでいます。


重度の自閉症の人が、どうして健常な人たちと普通にコミュニケーションが取れるんだろう?しかも、大変理路整然とした内容の本まで書いているなんて、なぜ?

それはご家族の並々ならぬ愛情と、たゆまぬ教育と、本人の資質と努力の賜でした。
幼いころから、文字に大変な興味と漢字を覚える能力に長けていたナオト少年の両親は、彼のこの才能に一縷の期待を託して、きキーボードを打つ練習を続けてきました。努力と才能のお蔭で、キーボードを介すると、自分の考えを記憶に留めることができ、それによって、自分の考えを発信することができるようになったのです。


彼のエッセーの中では、自閉症の自分は、自分で自分を制御できない様子を「自分は不良品のロボットのようだ」と表現していました。自分の意思とは関係なく、大きな声が出たり、体が動いたりしてしまうというのです。
一番心に残ったのは、自分の周りの人間が、自分のせいで不幸になってしまうのが一番悲しいといっていたことです。
親や自分の近くにいる人たちが、自閉症の子供のせいで、人生を犠牲にしていると感じることが、一番つらいことだと言っていました。
一番うれしいことは、親や自分の近くの人の笑顔を見ることなんだそうです。


ナオトさんが8年前に書いたエッセーが、今、世界中で翻訳されてベストセラーとなっている国もあるそうです。
発端は、イギリス人の作家(若いころ、日本で英語を教えていたので日本が読めた!)が、たまたま自閉症の子供が書いたというエッセーの存在を知り、その本を手にしたことでした。
イギリス人の作家の息子も、自閉症で、自分は息子とどうやってコミュニケーションをとっていったらいいのか、全く手立てがなかったそうです。
なぜ、ぴょんぴょんはねてしまうのか。
なぜ、大きな音が怖いのか。
なぜ、脈絡のない言葉が発せられるのか。
というような質問に、自閉症の人自身が自分の言葉で答えているのは、世界では例を見ないものだそうです。
世界中の自閉症の子供を持つ親や医師や療育機関の関係者にとって、初めて見る自閉症の人たちから見た世界の様子を知ることになったのです。


ナオトさんの表現力の豊かさには、本当に驚かされました。
自然への敬愛や、観察力や、それを表現する語彙の豊富さは、彼が自閉症であることの片りんも探せません。それどころか、有名な作家のエッセーですよ、と言われても、だれも疑わないと思います。


今一番手にしてみたい本の一冊です。