ドタバタの出発

名古屋からは7時55分出発の便で成田へ行く必要がありました。
集合時間は6時55分とのことでしたから、余裕をもって5時20分ごろに家を出ることにしました。準備万端で、家には二重のカギをかけ、意気揚々と車にスーツケース二個を積み込んで、いざ出発。
「朝早いし、お盆休みで通勤の車もないから、道はスイスイだよね」
なんて、これから始まるイタリア旅行への思いで、気分はいやがうえにも高揚します。そんな話をしながら5分ほど運転すると、夫が、
「ところで、その中に、長財布って入ってるよね」
と声をかけてきました。
「どれどれ」
ナンチャッテがリュックに手を入れてゴソゴソさがしてみましたが、それらしきものは見当たりません。
「じゃあ、家にあるかも」
なんて言い出してUターンして先ほど二重に鍵をかけた我が家に戻ってきました。
ナンチャッテは車の中で待つこと5分。待てど暮らせど夫が長財布を持って出てくる気配がありません。
仕方なく車を降りて家に入ると、夫は家探しの真っ最中でした。
ソファーの下、机の中、ベッドの上、トイレの中、脱衣所に洗面所に台所に下駄箱の上に・・・と二人がかりで思いつくところは全て家探ししましたが、とうとう長財布は見つかりませんでした。
その財布の中には、二人が空港でユーロに変えるはずだった日本円と、クレジットカードが入っていたものなのです。
「げげげっ、一体どうするつもりぃ?」
と、一オクターブは語尾が上がってしまったナンチャッテですが、なにしろ出発時間は刻一刻と迫ってくるわけで、20分ほど家探ししたのちに、見切り発進の決行に。

実は、前日に夫はタクシーで駅から自宅まで戻ってきました。
その時にはカードで支払った、というところまでは記憶があるらしいのですが、その後の記憶が定かでない。
現金の分は、まあ100歩譲って、事故だと思って無理くり納得できたとしても、クレジットカードの紛失に関しては、心穏やかにはなれません。
何と言っても、これから旅行するというのに、クレジットカード会社に紛失届をだして、カードを無効にしてしまったら、一体何で支払するのでしょうか?

もちろん、空港へ向かう車の中は、沈鬱な空気が充満していて、これからの楽しい旅の門出とはとても思えない重たい空気で呼吸困難になりそうでした。