半径一メートルの猫

しばしば耳にする猫の特徴として、人に干渉されずに一人(一匹)で過ごすことを好むという言い方をします。
実は、私の実家で飼っていた猫(23年生きた超長寿の猫です)は、王様気取りで、家族の者どもをかしずかして生きていたので、まさしく「気ままな貴族か王族か」という雰囲気を醸し出す猫でした。


猫とはそういうものだと思っていた私にとって、テルチャンは
「お前は犬か?」
と聞きたくなるような特性をいくつか持っています。


ご主人様(ナンチャッテのことです)のことが大好きで、常にご主人様から半径一〜二メートルくらいの場所にいて、ご主人様の動きに全神経を傾けて「次の動き」を読んでいます。
ナンチャッテがお手洗いにいこうと席を立つと、うたた寝していたテルちゃんも、さっと場所を離れて、足元10センチくらいのところに身を寄せます。うっかりすると蹴飛ばしてしまいそうな距離でぴったりとついてきます。
トイレの個室の前でじっと待ち続け、ドアが開くのももどかしげに個室に飛び込んできます。
これはナンチヤッテが風呂に入るときも同様で、脱衣所の前でじっと待ち続けています。
夜中にトイレに立つときも同じで、寝ぼけ眼のままに、トイレまでついてきてはドアの前で待っています。


朝の出勤前、「あっ、腕時計忘れた」とか「今日はゴミを出すひだったっけ」などと、寝室〜台所〜玄関の間をドタバタ行き来する間も、常に足元にまつわりついています。


猫って、こんなに犬みたいな行動をとるものなのか?
23年猫を飼っていた母に言わせると、日中、一人ぼっちで寂しくて仕方がなく過ごしている、その反動なんじゃないか、と分析しています。確かに実家には日中も人がおりました。
日中、一人で猫ちゃんを留守番させているお宅では、どんな様子なんでしょうか。


かといって、テルチャンは静かに抱っこされるというのが苦手なようで、いい子で抱っこされている時間はせいぜい一分。
彼女にとってもっとも気持ちのいい飼い主との距離は、どうやら半径一〜二メートルのようです。