けっこう執念深いテルちゃん

テルちゃんは、去年の夏に予防接種を受けたという記録があるので、今年もその時期に二回目の予防接種をうけることになりました。
推定二歳のテルちゃんは、動物シェルターに預けられてから、推定生後半年で予防接種と避妊手術を受けたことになります。
どこのお宅の猫ちゃんでも、押しなべて、狭いところが大好きなくせに、ネコ携帯用のバスケットに入ることには、異常なほどに警戒心を見せているようです。うちのご近所の、猫愛好家の方々は、口々に愛猫をバスケットに入れるのがいかに大変かを話しています。恐らく、家の中で飼われている猫ちゃんの場合、バスケットに入れられる状況といえば、外出する時で、しかも行先は動物病院で、注射か薬を飲まされるか、いずれにしても楽しくない目にあったことしかないのでしょう。
ご多分に漏れず、我が家のテルちゃんも、あのバスケットを見るだけで心拍数が倍くらいに上がってしまいます。


八月の下旬ころ、いよいよ動物病院に連れて行くことになりました。テルちゃんの隙をついて、さりげなく抱っこしたついでに、、あのバスケットに入れると、火のついたように泣き出し、道中、声が涸れるほど鳴き続けました。隙間から覗いてみると、目に見えるほどにぶるぶる震えています。病院に着くと、何かを察知したのかぴたりと泣き止み、代わりに、前よりももっと激しくぶるぶるぶるぶる・・・・震え続けています。


随分待った割には、手際よく診察と予防注射が終わり、なんとか再びバスケットに入れて自宅に戻ることができました。


可哀想なテルちゃんは、その日一日緊張が続き、抱っこしてみると夜までブルブルが続いていました。
そして、初めて我が家にやってきたときのように、物陰に身を隠して、じっと様子をうかがうテルちゃんに戻ってしまいました。
さすがに翌日の朝には体の震えは収まっていましたが、テルちゃんがママを見る目に、明らかに不信感が宿っています。


その証拠に、普段なら、ママが外出先から戻ってくる車の音を聞くや、大急ぎで玄関に走ってきて「ママー、寂しかったよーーーー。にゃーーーーーー。早く抱っこしてよーーーーー。ニャーニャニャニャ」と、ママ大好きコールがあるはずなのに、この日は、玄関にお迎えにすら出てきませんでした。
二〜三日は、そんな様子で、「ママ、私を騙したよね。私、マジ不信感持ってるんだにゃーーーー」のオーラを出して、お迎えすらなかったのです。
その後は、しぶしぶという感じで、玄関でのお迎えは再開したものの、「にゃ」の一声の挨拶も無く、「私、まだママのこと許してないもんね」のスタンスが続きました。


やっと、玄関お迎えに「にゃー」の挨拶が付くようになったのは、あの予防接種から一か月以上たった九月下旬のことでした。

鶏は三歩歩くと記憶が消え、猫は三秒前のことを覚えていない・・・なんていうものの喩えを聞きますが、あれは嘘だね。
少なくとも、負の記憶は一か月以上残るようです。


意外とテルちゃんが執念深く、根に持つタイプの女の子だったことが判明した、この夏でした。