銅の卵焼き器

去年、たまたま読んだ、有元葉子さんのエッセーの中に気になる一節がありました。
有元葉子さんは、ご存知の方も多いとは思いますが、料理研究家として名を馳せていらっしゃってお洒落な料理本やエッセーを沢山執筆しておられます。彼女については、また明日のブログで紹介します。



気になる一節というのは、フライパンの話の中にありました。
今や、フライパン売り場に行って、テフロン加工してないフライパンを探すのは至難の業ともいえるほど市民権を得たテフロン加工。
彼女は料理研究家という職業柄、普通の家庭の使い方とは比べ物にならないほど頻繁にフライパンを使用しています。テフロン加工のフライパンは便利ですが、傷がつきやすいという難点があります。
彼女は月に一つの割でフライパンを捨ててきたというのです。テフロン加工が剥げたフライパンの危険性について知っているからだとか。
その書き方が微妙で、
「あらァ、気にしないで。その害については、知る人ぞ知る、というもので、知らない人は気になさることないのよォ」という感じ。
私は、その一節を読んだ時、何だか急に落ち着かない気持ちになりました。テフロン加工が剥げ剥げの我が家の卵焼き器が脳裏に浮かんだからです。
急いで台所に行って卵焼き器を取り出してきました。見れば見るほどテフロンが剥げた様子が禍々しいもののように思えてきたので、一思いに捨ててしまったのです。



おせち料理を作るときに出し巻き卵を作ろうにも、卵焼き器を捨ててしまったために、作ることもできません。
それで、この年末の、忙しい時に、調理器具専門店に行って、プロ仕様の銅の卵焼き器を購入したのでした。



使ってみて、プロが失敗なく出し巻き卵を焼くわけが分かりました。
あれは腕というより道具だと思いました。
銅は熱の伝わり方が早くて、卵汁を流し込んだときにジュッといって瞬間的に薄い卵の膜ができます。今まで使っていた卵焼き器では、これほどまでに薄くすばやく膜ができませんでした。
特別に不器用でないハズなのに、出し巻き卵が上手くできないという方がいらしたら、恐らくは腕のせいではなく、道具のせいだと思います。



たぶん空焚きしない限り随分永く使える物だと思います。テフロン加工が剥げている方も、不器用でないのに出来上がりがイマヒトツという方も、この際、銅の卵焼き器をお買いになってみてはいかがでしょうか?