ひばり館

この間、図書館で借りた本で、思いもかけず衝撃的な本と出合ってしまいました。
表紙は明るいオレンジ色で、「ひばり館」なんていう美しい題名の本だったので、きっとこの館で夢物語のような楽しい話が始まるのだろうと思って読み始めたのですが・・・・・




イタリアの作家アントニア・アルスランが書いた小説で、数々の賞を受賞した作品です。
時代的には第一次世界大戦が始まる直前のトルコが舞台になっていました。



勉強不足のため、この本に出会うまで全く知りませんでしたが、かの悪名高きドイツのホロコーストにも匹敵する大量虐殺が、実は第一次世界大戦前に、起きていたという話でした。史実です。
当時のトルコは、現在のトルコもそうですが、国民の大多数がイスラム教徒です。
そのなかでアルメニア移民が、静かに暮らしていました。アルメニア人はキリスト教徒です。大戦前の緊張した時代。人種も宗教も異なっていて、しかも国での人口比が小さくて、且つ、比較的裕福に暮らしているアルメニア人。
これって、状況としてはドイツにおけるユダヤ人と全く同じですね。



この本の中で、トルコで起きた、アルメニア人迫害の話が、淡々と描かれていきます。題名の「ひばり館」とは、ある裕福で幸せなアルメニア人の一族が所有している別荘の名前です。この別荘「ひばり館」こそが、男たちが皆殺しに遭い、女たちは当てのない死の彷徨に出るという悪夢のスタート地点の名前だったのです。



読み始めたら絶対に途中では止められない。あの家族がどうなってしまうのか?その結末を知らずして本をとじることなんてできないでしょう。ここでは敢えて結末は明かしません。



こんなに奥が深くて、読者を引きつけて離さないこの本が、なぜにベストセラーにならないのかしら?その答えは、人間関係がすごく複雑なのと、名前に馴染みのないものが多くて、何度も家系図をたどって確かめながら読まないといけないことだと思いました。

体力・気力ともに充実していて、強い心でいられそうな体調のときに是非読んでください。
今年になって読んだ本の中では私のイチオシの本です。