月の石

久々に、面白いファンタジーに出会いました。
「月の石」トールモー・ハウゲン著ノルウェーの人です。
ノルウェーの街が物語の舞台になっています。
北欧へは訪れたことはありませんが、いつか訪れてみたい外国のナンバー5には入っている憧れの国です。


月の石とよばれる宝石を巡る、三つの世界で起きている出来事が、一人の男の子を巻き込みながら次第にその輪を狭めていくというお話です。
三つの世界とは少年が住む世界(オスロ)と、半月宮(月を崇める人々か集う宮殿)と、伝説の世界の三つのこと。
半月宮とか伝説の世界なんていうと、
「なーんだ、子供の読み物かぁ」
と思われそうですが、子供用じゃないんだなぁ。 「大人のファンタジーというのかしら。


現実の世界の中で、主人公の男の子を中心に、金持ちの両親・祖母(ノルウェーからロシアへ)・曾祖母(ロシアからノルウェーへ)が、まったく別々に、それぞれにほとんど関わりなく無関心に生きています。家族ってこんなにもお互いに無関心に生活していけるんだろうか?と、不安になるほどです。
激しく憎しみあっているようでもなく、愛情に渇望しているというわけでもないのですが、全然暖かくないという、すごく不自然な家族です。


そこらへんのところは、興味のある方は読んでいただけたらいいと思います。


作者あとがきに、「私たちは多かれ少なかれ普通の生活を営んでいますけれども、だからといって私たちには普通でない体験をする可能性がまったくないかというと、そうではありません。」という文章があります。
自分には全く身に覚えのないところで何かが始まって、次第に自分が巻き込まれているのに、知らないのは本人だけ・・・・実は、これって人生そのものじゃないですか?

私は、昔から(小学生のころからです)、この手のファンタジーにものすごく共感できました。
ほら、たった今も、この瞬間も、本人の与り知らぬ所で、大きな歯車が回っていて、本人の運命のみならず家族や友達や地域の人や知り合いや、知り合いでない人もひっくるめて、重大な運命にかわるようなことが起きるところかもしれない、よね。


こういう書き方をすると、よくないことが起きるってこと?と思われそうですが、逆に、すごい些細な人の善意が、思いもかけぬ形で大きな幸運をもたらしているところかもしませんよ。


この話の面白かったところは、ファンタジーにありがちな善悪のどちらか一方に偏るってことがなくて、善意も悪意も同じくらいの分量がほどよく配してあったところです。
よかったらご一読ください。