二年生の二学期最初の教材は「盆土産」です。

舞台は、東京上野から夜行で八時間、それからバスを乗りついで村の停留所で降りると、更に徒歩で一時間という最果ての村。
時代は、高度経済成長期ですから、1950年代後半から1970年代前半ころでしょうか。



私が小学生のころ、夏休みの課題図書に取り上げられていた本の中に、毎年と言っていいほど「出稼ぎ」を背景に書かれたものが入っていたと記憶しています。たいていは貧しくて物悲しい色調のもので、当時、私の大嫌いな手の話でした。
1970年代に小学生だった私は、まさに高度経済成長末期を直に体験した世代です。


今から思えば、十分貧しい時代で、そんな中で更に貧しい話なんか読みたくないと思ったんだと思う。
物語の中で、主人公の家には、電話もなく冷蔵庫もなくソースも油も常備してないような東北の寒村の標準的な家庭が描かれています。
私の実生活には冷蔵庫もソースも油もあったけれど、随分不便な時代でした。
そういえば、あのころは、まだいろんなものが家に無かった。
初めて家に電話が入ったこと、初めてオーブンを買ったこと(電子レンジなんてまだまだ先です)、初めて冷凍冷蔵庫が入ったこと、初めてクーラーを入れたことなど覚えています。



だから、この盆土産を読むと、懐かしいような、物悲しいような、切ないような、気持ちになります。一方で、どんどん豊かになっていくのが実感できた活力溢れる時代だったよね。



生まれた時から携帯があって、パソコンがあって、テレビはブラウン管じゃなくて、遊びはゲームボーイだし、車はステップワゴンで家族四人が広々と乗れるし、ティーシャツは1000円のものでもセンスいいし、家に和室もないし、囲炉裏?何それ〜だし・・・・・という平成5年生まれの生徒には、絶対に伝わらない話だなーと思いながら、教材準備をしています。