げに恐ろしきもの

ここのところ、意図した訳ではないのですが、続けさまに鎌倉時代を舞台にした小説を読んでいます。
NHKの金曜時代劇に登場するのは決まって江戸時代ですから、それより500年前の話です。時代的には、古いはずなのに、読む方としてはかえって新鮮に感じます。
特に面白かったのは、高橋直樹氏の書いた霊鬼頼朝という本です。



鎌倉幕府が開かれて僅かに3代で源氏の血筋が途絶えてしまうというのは、確かに奇異と言えば奇異なこと。あの時代は血筋を絶やさぬために、一夫多妻が当たり前でしたから、当然、源頼朝にも何人もの息子がいたはずです。当時の栄養状態・衛生状態・平均寿命から考えて、何人かは亡くなってしまうと考えても、頼朝の血筋を継ぐものが零になるというのは考えにくいことですよね。



しかも御家人の一つに過ぎなかった北条氏が100年以上も政治の実権を握り続けることになるわけですが、北条氏は平家の流を汲む一族だったそうですよ。
源頼朝には、頼家と実朝以外にも何人かの子供がいましたが、異腹に生まれた兄弟は、人一倍嫉妬心のつよい政子によって仏門に入れられてしまいます。仏門に入れば、俗世とは切り離されるとはいうものの、さすがに血筋が絶える様な一大事には還俗させるという手も取れたはずです。



でも、そうなることなく、頼朝の血筋が絶えてしまったのです。



頼朝亡き後は、政子の長男頼家が二代目を継ぎます。
しかし、政子は頼家を廃して次男である実朝を三代目に据えてしまいます。頼家の子供である公暁は当然仏門へ入れられますが、皮肉なことに、隔世遺伝とでも言いましょうか、もっとも頼朝の気性・性格・体格等の資質を強く受け継いだものが、この公暁だったのです。
しかも、公暁にとって、叔父さんにあたる三代目将軍実朝は、公暁にとっては親の敵となってしまうのです。



こうして、実朝は甥っ子に討たれてしまい、仏門に入った異腹の兄弟・またその子供たちも人知れず消されてしまったというのが、話の大筋です。
その中で、唯一生き残ったのが貞暁という高僧で、その人は、将軍職につく意思がないことを示すために片目を潰して見せたために、さすがの尼将軍政子も引き下がったということでした。


いつの世も、異母兄弟姉妹の確執ほど恐ろしいものはないね〜(怖くてドロドロの昼ドラのストーリーも、大抵は異母姉妹が主人公ですよね)
現代版異母兄弟の確執で、世の中の耳目を集めたのが、堤ファミリーでしたね。
げに恐ろしきは、鬼でも霊でもなく、異母兄弟じゃ。