面白い本に出会いました。

悪魔とプリン嬢という作品です。
題名の「プリン嬢」のインパクトが強すぎて、なんとなく買いそびれておりましたが、先日、思い切って買ってきました。



「大人の寓話」という分類にでも入れたらいいのでしょうか?



全ての人間が持っている、善と悪とのせめぎ合いが書かれています。
悪い心がまったく無いという人は居ないでしょうが、普段は、犯罪者でないかぎり、一応は、「悪」を抑えたり、馴らしたり、または自分には悪い心は無いのだと信じ込もうとしたりして生きています。



この物語で言う「悪」とは、ちょっと嘘ついたり、ちょっと物をくすね取ったり、ちょっと人を騙したり、というレベルの「悪」ではなく、ある状態のときには、「他人を殺す」という究極の悪を犯せるのか、というものです。
興味のある方は、ぜひとも読んでいただきたいです。ただ、キリスト教の素養があることを前提に話が進んでいるので、私のような俄か仕込みの浅学な人間には、作者の意図が正確に伝わっていのかは、ちょっと疑問ですが、とにもかくにも、話の設定が面白かったです。



プリン嬢は、果たして悪の誘惑を断ち切ることができるのか? 完全に悪に心奪われた人間は、存在するのか? 個人では悪を犯せるのか? 集団では? 悪や善の気持ちはどのように伝播するのか? 気持ちはどのように変化するのか? 

簡潔な力強い文体で、話のテンポも良く、秋の夜長にお薦めの一冊です。