扇の的

平家物語の山場の一つである「扇の的」の単元に入っています。

ここでも、当時の時代的背景について、一から教えています。
信じてもらえないと思いますが、中学二年生で、鎌倉時代と、平安時代の区別がつかない生徒も随分いるんですよ。



まず、旧暦二月の夕方六時ごろに、海のほうから、小船に乗った女房が竿の先に扇をつけたものをもって漕ぎ出してくるシーン。

一日の戦いは日没と同時に終了します。当時は投光機があるわけじゃないので、日没後は闇が広がります。
源氏は陸側に戻り、平家一門は沖のほうに戻って休息するわけです。
鳥居が水中に浮かぶ広島県安芸の厳島神社に代表されるように、平家は海での戦いを得意とする一族なので、平家一門は船に乗っているわけです。一方の源氏は海よりは陸での戦いに長けている一族です。
と、そこへ沖(平家)のほうから一艘の小船が漕ぎ出してきます。

ここだけ見たら、
「平家って、戦いの場に、若くて美しい女性をはべらせて、しかも、一日の疲れを吹き飛ばしてしまうような、こういうお楽しみショーをさせちゃうような、すごい余裕があるんだ〜!ひょっとして、今現在、平家側の圧勝?」と、勘違いしてしまいそうですね。
そこで、資料集をみて、1180年の富士川の戦い以来、全戦全敗の状況で、しかも一ヵ月後には壇ノ浦で平家一門の滅亡が迫っていることを確認させます。
つまり、平家一門は、若い女性を戦場にはべらせているのではなく、若い女性も含めての、
一門運命共同体で、負け戦の中、都落ちをし、西へ西へと落ち延びている最中だというところから説明が必要なんです。


今時の子って、本当に日本の歴史に弱いのです。