字が下手な生徒

私の勤め先の中学では、自主学習の一つに、漢字の練習をしたり、テキストの本文を写したり、自分の好きな作家の小説を写したりする、というものがあります。
ポイント制になっていて、一ページ(200文字)を一ポイントとして、カウントされます。一応、一学期の間に50ページ・・・日割りだと、二日に一ページくらいの割合で、コツコツ練習してね、というのが狙いのようです。


私の本心としては、中学生にもなって、漢字の練習帳を先生にチェックしてもらわなければならないなんて幼稚すぎるんじゃないの?という気もしますが、特に事を荒立てることもないかなぁ、と日々提出されるノートに目を通しているのです。
確かに、今の生徒って、板書されたものを写したり、コメントをメモしたりするのが、すごく遅いのは事実です。
提唱者の先生は、こういうコツコツした訓練で、文字を書くスピードが早くなるといっておられました。早くなったか、ならないかは未確認です。


私自身は、メモはよく取る方ですが、すごく汚くて、とても人様にお見せできるような代物ではありません。
ほんとうのことをいうと、自分のためのメモや、ノートなんて、自分が読めればそれで十分なんでないの?という気はしているのです。
ところが、私のようなおばさん非常勤講師と違って、中学の教員をしておられるような方は、ものすごく「規律」とか「しっかり」とか「きっちり」とか「かっきり」ということにこだわりを持っている人が多くて、ご自身も、恐れ入谷の鬼子母神・・・・まるでパソコンで打ち出したかのようなきれいな字を書く人が多いのよね。
だから、生徒のノートにミミズがのたくったような文字が書かれていると、きっと許せないのでしょう。
私は、本当のことを言うと、ミミズだろうが、ナメクジだろうが、読めりゃあ文句はないんだけどね。


そんなわけで、ほとんどの生徒は、私から見たらほとんど書写の手本にしたいような、素晴らしい字で書いてきます。
きっと心の中もこんな風に素直でのびのびしているんだろうなあ。


ところが、やっぱり悪筆の生徒もいるんです。
一生懸命書いているのかも知れませんが、なにしろバランスが悪くて、ものすごくふざけた文字に見えるのです。
すごく気の毒。
しかも、恐らく頭の回転が速いのでしょう。手のスピードが、頭の中で考えたことのスピードに追いつけなくて、結果としてミミズになっちゃうんだと思うのです。
この状況を「あいつはやっつけ仕事でやっているから、こんなに乱雑な文字になるんだ」
というのは、かわいそうだと思っています。
とりあえず、
「もう少し丁寧に書かないと、入試の時に試験官に読んでもらえないよ。中国の詩聖杜甫だって、字が下手で科挙に試験に受からなかったという噂もあるくらいですから」
と、注意してはいるんだけど・・・・・