猫を抱いて象と泳ぐ

すんばらしい。すんばらしい。
小川さんの作品の中の白眉だと勝手に思っています。
小川さんの作品は、すべて小川ワールドが舞台となっています。
静謐で清浄でエレガント。



ガサガサ、バタバタと小川ワールドとは対極ともいえる世界に身を置く私としては、無神経に近づいていって、なにか粗相でもしたら大変、という思いがあって、すごく遠くからそっと見つめていたい、そんな世界です。




小川ワールドに出てくる登場人物たちのエレガントさは、国宝級です。
私ってエレガントでないなぁ〜と、かなり昔から自覚していたので、エレガントな人、立ち居振る舞い、作品、暮らしというものには、随分前から強い憧れを抱いていました。
自分にはエレガントという要素が欠けていると、絶対的に認識したのは、18歳の時。
旅行先で一緒になった、一つ年上の女子大生の食事姿を見たときです。
またいずれ、このことはブログで紹介するつもりです。



チェスとか将棋とか囲碁とか、升目を使うゲームとはまったく縁がない生活を送ってきたので、この話に出てくるチェスの深遠な世界のことは想像も出来ません。
それでせっかくのチェスの対戦の場面も、ぼんやりと靄が掛かったような感覚でしか伝わってこない。それがすごく残念でした。




それでも十分に小川ワールドに浸れます。
貧しい人や、世間からは忘れられて見捨てられてしまったような人や、役に立たない人や、健康でない人が主な登場人物なんだけれど、例以外なく全員がエレガントなのよね。
違う世界にひっそりと、確かに、う〜ん、やっぱり確かでもないか、淡くてはかない存在なんだけど、すごく存在感があるというべきか、そういう描かれ方をしています。




私の上半期イチオシの珠玉の作品です。
もう一回読み返したいと思っています。