三十年後

授業中に、ある話の流れから、生徒Aが、生徒Bに向かって
「おまえはチビだから関係ないよなぁ」
という発言をしました。



実は、前からちょっと気になってはいたのですが、生徒Bはクラスの背の低さを時々からかわれていたようなのです。
今回は、私の授業中だったということで、少しだけ時間をとって、生徒にこんな話をしました。



「みんな、ちょっと聞いてくれるかなぁ。なにを思っているか知らないけれど、チュウボウの三年間の姿は、世を忍ぶ仮の姿なんだよ。あと三十年したら、あんたたちは何歳になってる?」
「45歳」
「だよね。たいていどんな学校でも、卒業三十周年という同窓会とかクラス会とかが開催される時期なんだわ、三十年後というのは。
それで、みんな久しぶりだと思って行くよねぇ。ところで自分が四十五歳の姿って想像できる?」


しばらく間を取りおもむろに、
「あのねえ、その時、男子の約三十%は薄毛なの。そして男子の半数はメタボです。」


「一番よくあるパターンは、生徒B君のようなタイプの子。仮の姿の中学時代は背が低かったくせに、高校に入って一気に三十センチ伸びてクラス一のノッポになっていたりするのよね。B君をからかったことのある人はきっとクラス会でB君から見下ろされて気まずい思いをすると思うよ」


「あ〜、女の子も笑っているけど、変わる人は変わるよ〜。どういう風になるかは言いませんけど。だから、男子も女子も、平和な気持ちでクラス会に出たいなら、姿形のことでいろいろ言わない方がいいと断言します。」


・・・・・というような話をしてきました。
授業のあとで、B君が
「嬉しかったです」
と言ってきてくれました。