アダムの呪い

ブライアン・サイクス博士のDNA、特にY染色体に乗っかっている性を決定する遺伝子をめぐる科学の話です。
私は、この手の科学分野の本をあまり読むことがないので、なかなか話の筋を追うのになれなくて、一冊読むのに一週間近くもかかってしまいました。
一冊の本を一週間もかかって読むというのは、私にとっては画期的なことで、もしも内容がつまらなかったらとっくの昔に放り出していたことでしょう。
「アダムの呪い」が、放り出せないくらい面白かったということです。



遺伝子レベルで、男性と女性の確執がドラマチックに語られています。
今年一番のお薦めの一冊です。



以前、NHKスペシャルで、全ての人類はアフリカの一人のイブの子孫だというような内容のことを放送していました。女性は、ミトコンドリアDNAを母系で途切れることなく受け継いできているのだそうです。ミトコンドリウDNAは比較的単純な構造の塩基の並びで、あまり突然変異を起こすことがなく、追跡が容易らしいです。
一方のY染色体は、父系で途切れることなく受け継がれていきますが、どういうわけか、ミトコンドリアDNAのときのように、一つの祖先には行き着かないで、途中で消えたり、途中で大きなグループに隆盛していったりと、予測不能な遍歴を経ているとのこと。
科学者らしく、そういう現象にも検証を加えて、理由をつけているのですが、その「理由」の章が面白い。
「あれ?私って、歴史物を読んでいるんだっけ?」
と、錯覚するほどの筆致で書かれてあって、読みごたえがあります。



科学が得意な人なら、もっとすんなり読めると思います。
      

      ソニー・マガジンズ
       アダムの呪い
      ブライアン・サイクス著(大野晶子訳)