北欧の騎士

何を隠そう、うちの息子Aは、「バカキャラ」をこよなく愛し、しかも自分も
敢えてバカキャラになりきるのが趣味という変わった人。
どこでみたのかは忘れましたが、息子Aを形容するのに「ぬらりひょん」ということばがぴったりだなぁ、と思ったことがあります。

弟の息子Bは、ある時学校で、友達C君と雑談をしているときに、
「お前の直近の目標はなんだ」
と聞かれたそうです。
息子Bが、
「兄ちゃんを超えることだ」
と答えたら、
「お前、そんなに低すぎる目標でいいのか」
と言われたといって帰ってきました。


息子Bの友達C君は、息子Aと同じ部活動吹奏楽です。つまり三つ後輩にあたります。
C君は、先輩である息子Aの部活内での立ち居地・キャラ(バカキャラ)を見て、上記のような正直な感想を持ったようです。
そういわれて、息子Aは大変満足げでした。

実は、息子Aの友達には、「ぬらりひょん」タイプの人が多くて、みなさん大変優秀なんだけど、第一印象の「バカキャラ」が強すぎて、実力とのギャップに戸惑ってしまいます。


そんな中、息子A高校二年生のとき、「北欧の騎士」と名づけた貴公子と同じクラスになりました。
息子Aが
「オレの周りでは見たことのないほどの典雅な奴」
と大賞賛していました。
「へえ、どんな感じの人?どうせスノッビーで嫌味なやつなんじゃないの?」
「とんでもない。髪はつややかで自然にカールしていて、体から高貴さが染み出しているという感じ。性格も良くて本当に北欧の騎士みたいなんだ」
「へえ」
(幾分かは、やっかみの気持ちのこもった「へえ」です)


今年、大学入試のとき、初めて「北欧の騎士」に会いました。泊まったホテルが同じだったからです。
息子Aのたとえどおりの「北欧の騎士」がそこにいて、辺りに爽やかな一陣の風が吹きぬけたかのような空気がありました。
雲間から差し込む一筋の陽射しのことを英語で「エンジェルスラダー」(天使の階段)と言うんだけど、一瞬、それを見たような気がしました。


普段、バカキャラのお友達ばかりを見ているせいか、彼の印象が強すぎて、三ヶ月経った今も、未だに瞼の裏に「北欧の騎士」の残像が残っています。