利休にたずねよ

山本兼一氏の直木賞受賞作品です。


これは文句なしに面白かったです。
利休と秀吉の確執が描かれているんだけど、表向きは、天下人である秀吉に平気で逆らう利休に対して、秀吉が「こしゃくな利休めがっ」という気持ちが高じて、ついには利休に死を賜るということになっています。
ところが、ストーリーの展開に伴って、秀吉が利休に対して抱いているところの本心が次第に見えてくるのです。

伏線として、利休の秘蔵する緑の香炉をめぐる一種の謎解きみたいなストーリーになっているのです。


今年のNHKの大河「江」に登場する人物の何人かも、この本の中に登場してきます。
利休と秀吉はもちろんのこと、石田光成、徳川家康細川忠興など。
(当然のことながら、江や淀の方は出てきません)


本の帯には、『おのれの美学だけで天下人・秀吉と対峙した男・利休の鮮烈なる恋、そして死』と書いてありました。
とはいえ、「鮮烈なる恋」というところは、ちょっと弱いかなあ?



ちょっとでも茶道の心得がある人は、お手前の描写や茶室のしつらえ・道具立てのことなど、作者の茶道に対する造詣の深さに驚かされることだと思います。
そういう風にして「侘び茶」の歴史が始まったのかと、茶の湯の歴史も知ることが出来ますよ。