私の目利き

今日は勤め先の高校の文化祭でした。
私の担当するクラスのクラス展示を見終えて、そろそろ帰ろうかなあ、と思っていたころ、ある生徒が、
「先生、武道場でバザーをやっているよ」
と教えてくれました。
「え゛ー、もう遅いよぉ」
といいつつも、なにかと出会える予感もあって、足を伸ばしてみました。 (残り物には福があるっていうじゃない?)


すでに開始時間から時間が経っているせいか、バザーの会場は、お世辞にも盛況とはいえない状況した。細々とした商品が数十点残っているだけ。
なんと、主力価格帯は「10円」なんですよ!
そんな中、他を圧倒する高級品価格、三桁の値段表をつけた商品がありました。「300円」っっっ。
10円のなかの300円がどれだけ「高級」そうに見えたか!
何気なく手にすると、それはハンガリーの名陶ヘレンドの「すかしのボンボン入れ」じゃあありませんか。



実は、私の趣味の一つは、現在も近い将来も遠い将来も買う当てはないのに、デパートの特選品売り場をウロウロすることなんです。
バカラだのリヤドロだのジノリだの、現在も将来も私の家では使ったり飾ったりすることはないような素晴らしい陶器ガラス類売り場を見て廻るのが大好きなんです。
値札を見ては、「はぁ〜」「へえ〜」「ふーん」と溜息とも感嘆とも嘆息ともとれる感動詞を密かに漏らしつつ飽きもせず呆けたようにうろつくのです。

以前、私は確かにデパートの特選品売り場で「ヘレンド」の「すかしボンボン入れ」を見たことがありました。あんなに小さな器に10万円の値段がついていて、それがものすごいインパクトだったため、鮮明に覚えていました。
それが、300円?


思わず、PTAの売り場係りに
「これ、ホントに、ホントに、ホントーに300円なんですか?」
と三回も「本当」かと聞いてしまいましたよ。


自宅に戻って、パソコンで調べたところ、間違いなくヘレンドの『すかしボンボン入れ』で、高さ12センチ・定価105000円(一応念のため。十万五千円也です。一万五千じゃないっす!)でした。


世の中の夫の皆さん。是非聞いていただきたい。
あなたの奥さんが、現在も将来も買う当ても使う当てもないのに、デパートの特選品売り場をうろうろしていたとしても、決して嫌味を言わないで下さい。せかしたりしないで、思う存分うろうろさせてあげてください。彼女は、目利きの鍛錬をしているのです。そして、それは必ずや人生で役に立つことがあるのです。
いつぞや、鑑定団の「いい仕事してますねぇ」の中島さんがおっしゃっていました。
目利きになる一番の近道は、本物だけをたくさん見ることだと。


私は苦節20数年にして、初めてその意味を解し、彼の言の正しさを証明しました。