夏目漱石の「こころ」

中間テストが終わったら、二学期も後半です。
二学期の後半は
高校三年生の現代国語は教材の定番中の定番「こころ」の下『先生の遺書』からの抜粋です。
そういやあ高校時代に読みましたよね。


抜粋とはいえ、なにしろボリュームも多いし、内容も深い。そのため、二学期後半の期末テストの範囲は、「こころ」だけとなります。


全体像を思い出すためにも、「こころ」全編を通して読んでいます。
改めて読んでみて気付いたことは、昔と比べたら比べ物にならないほど読みやすくなっているということ。語句にしろ言い回しにしろ理解しやすいんです。
高校時代に読んだときの感想は、な〜んだかまどろっこしくて古臭い表現ばっか。おまけに暗い話じゃのう・・・・でした。
三十年を経た今、すっごくわかるんですよね。ストーリーの背景が。内容が。気持ちが。
たとえば、こんななんでもないシーン。
語り手の私の父親が腎臓病で危篤、という場面です。
その期に及んで、母親が息子の就職先のことで気を揉んでいるところなんか、昔は、ただの田舎者でまったく世間を知らない愚かで見栄っ張りな老婦人としか思えなかった。
ホントに無知って怖いなあ・・・・みたいな完全な上から目線でこのオバサンのこと見ていたのに、今は、このオバサンの気持ちのほうにより感情移入しちゃうみたいな。
「親に大学まで出してもらって(明治時代に地方から大学へ行くということの大変さを想像できます?)、学問を積んでも、親の気持ちの一つもわからんのかい、お前はっ」


前は愚かとしか思えなかった、かわいそうな人々の数々の所業や感情がすごく身近に思われ、逆に相当感情移入して読んだ「遺書」や「私」がとてつもなく自己中心な人たちに思われるのです。


大発見でした。
高校の講師をしなかったら、また「こころ」を読み返そうだなんて思わなかっただろうな。
それよりなにより、若いときに「こころ」を読んでいてよかった。
延々と高校の教科書に、これが取り入れられている理由がわかりました。
ひょっとしたら、現代の作家の作品の中にも、あと100年くらい読みつがれて「平成の名作」として教科書に載る作品も出てくるかもしれませんね。
もしも、その「名作」をあなたが選べるとしたら、何を選びますか?