乾隆帝の幻玉

民国時代のヘ北京が舞台の、骨董を廻る小説です。


もちろん登場人物は中国人なのですが、主人公の名前に馴染みがないので、読むほうとしては「あれ?誰だったっけ?」とボケること数回。
そんな苦労はありましたが、ストーリーはなかなか面白い。


中国人の骨董バイヤーや商店主の「面子」をめぐるやり取りが、とても生き生き描かれていて、義理と人情は男の花道の浪花節みたいな一面もあります。
かと思えば、金がすべてを解決する資本主義の権化みたいな一面もあって、すごく複雑です。


乾隆帝といえば、清の最盛期の皇帝として誰でも知っている(肖像画も有名だよね)人ですが、文化に造詣が深くて、文章も書道も超一流の人なのです。
中国の至宝展などで時々目にする「玉」。その乾隆帝が愛蔵したといわれる「玉の椀」が、ひょんなことから市場に姿を現したところから話が始まります。
素人の私には、あの白っぽいような青っぽいような緑っぽいような、ぼんや〜りした、あの「玉」のどこに魂を奪われるような魅力があるのか判りません。が、この物語では、この「玉盃」を廻って何人もの人間が命を落とし、運命を変えられていきます。


ストーリーは面白いんだけど、一人ひとりの登場人物をものすごく丁寧に取り扱って描いているので、「まどろっこしい」のは事実。
時間に余裕を持って、読んでください。